湿原の観光客

先日、久しぶりにコッタロ湿原を訪ね、展望台の下のトイレで用を足していると、隣に来た男性が「スミマセン」と話しかけてきました。

「ココニハ クマ ハ イマスカ?」
中国人観光客でした。もの静かで日本語が堪能です。
「私も地元の人間ではないのですが夏にはよく釧路に来ています。今まで一度も湿原内でクマに出会ったことばありません。ご心配いらないでしょう。」
「ソウデスカ アリガトウ ゴザイマス」
彼は喜んで奥さんと娘さんのところへ行ってそれを伝えているようです。それでも怖いのか幼い娘さんは不安そうに奥さんの腰に抱きつきながら登り口へ歩いて行きました。

コッタロ湿原展望所

何気なく見送っているとちょうどそこに若いカップルが木道を下ってきました。
「〇×△※×△※~?」
「〇×△※×〇△※〇」
中国語で会話してすれ違っていました。

カップルの車が去るのと入れ違いに黒い高級SUVが駐車場に入ってきました。父子連れでしたが、助手席の息子さんはスマホのゲームに夢中で外の景色には興味がないようです。お父さんだけが車を下りて来てしきりに看板を読んだり木道の上を見やったりしています。
「湿原が一望できますよ。少しだからがんばって登られたらどうでしょう。」
お節介な性分のボクは思わず声をかけました。お父さんはニコニコ笑って、しきりにお辞儀をして謝意を伝えてきますが、ボクの言ったことは理解できなかったようです。英語で言い直しましたが通じませんでした。見た目では分かりませんが彼も中国人のようです。

自分がどこにいるのかちょっと分からなくなってしまいました。昔、泉州の石獅湿地を訪ねたことがありますが、そこでは日本人どころか外国人にすら会うことはありませんでした。地元の人も観光客も笑顔で親し気に接してくれます。ああ、福建省を旅しているんだなあと旅情に浸ったものでした。一方、ここは確かに釧路のはずです。日本人観光客はいったいどこへいってしまったのでしょう。

さて、アルバム「コッタロ湿原」リニューアルの準備がほぼ終わりました。釧路で外国人を見かけるのはせいぜい真冬に鶴居の音羽橋に来るカメラマンくらいのものだった頃…そんな古き良き釧路湿原の風景です。パスワードの控えはお済みですか?

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