Apr.2014
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ここで久しぶりに事故ってしまった。
日の出前、浜に出られる場所を探していると、お誂え向きに砂浜の脇まで車で乗り入れられるところに偶然出た。
ラッキー♪
このときはまだ、朝日だけを撮るつもりであった。駐車場から海は見えないが、高さ2,3mほどの小さな砂丘を迂回すると今度は誰もいない浜にぽんと出た。
さとシエ、やっぱ何か持ってるわ。
大急ぎで車に戻り、助手席の妻を揺り起こしてサティることを告げた。「サティる」とは、「妻の全裸ヌード写真を撮る」という意味の隠語である。さとみのネット上の愛称「サティ」から派生した自動詞で、他に野外でサティるのに適した場所を意味するサティ場という名詞もある。
こういうときのサティは素早い。ボクがレンズを交換している間に下着を取り、起きたばかりの顔に口紅だけをサッとひいた。問題はボクたちが来る前から停まっている白いクラウンである。中にはネクタイ姿の中年男がマイ魔法瓶のコーヒーでコンビニのサンドイッチをうまそうに頬張っている。晴れた日の出勤前、お決まりお気に入りの寛ぎタイムといったところだろうか。見るとダッシュボードに未開封のメロンパンが置いてある。クラウンに乗ったこの手のオヤジは総じて健啖である。大丈夫。さとシエの早業なら、彼があのメロンパンを食べ終わる頃には、撮影を終えてはや車で国道に出ているだろう。
慢心ということばがある。「鰯の頭も過信から」ということばもある(嘘)。事故はえてしてこういうときにやってくる。
浜に出てサティが全裸になると、ボクはいちおう念のため、駐車場からの通路を見通せる場所からカメラを構えた。30カットほど切ったところで突然サティがフリーズした。視線を追って振り向くと、砂丘の上にマイ魔法瓶とメロンパンを持った健啖クラウンオヤジがあんぐりと口をあけたまま立っていた。

写真は朝焼けが白トビしないよう超アンダーに撮っているので、サティはほどよくシルエットになっている。しかし実際にはあたりはもうすっかり明るい。砂浜を砂丘の上から見下ろされていては、身を隠す場所とてない。ボクらは「朝の体操おわりー♪」みたいな明るい風で気まずい雰囲気をごまかしながら、ボクの着ていたジャケットを裸のサティに羽織らせてそそくさと車に向かった。車に乗ったらスピンターンして急発進逃亡である。何しろサティ場目撃者の車は隣のクラウンである。
朝食中だった彼にしてみれば、東京ナンバーの車が突然やってきたかと思えば、カメラを持って浜に行った夫が慌てて戻ってきて今度は妻を急き立てて行く。
「よっぽど、今朝の朝日がきれいなんだろうか。」
と興を覚え、パンを持ったまま散歩に出ることは十分あり得たわけだ。慣れた場所なら大きく迂回せずに砂丘の上にでる道を知っていたのかもしれない。
ボクは、人に見つからないよう注意した上で、野外アートヌードを撮影することが法に触れるとは思わないが、偶然目撃した人が性的興奮や不快感を感じたとしたら犯罪になってしまう可能性はある。何より人に迷惑はかけたくない。サティるにはいつも慢心せず慎重な姿勢が必要だ。…と、反省し、さしものさとシエもこの日はしょんぼり大人しくしていたかと言えばさにあらず。「高千穂サティ」や「棚田サティ」はともにこの日の作品である(笑)